オマール・ソーサ インタビュー
オマール・ソーサ インタビュー
Interview & Text by jun ide
取材協力:Iori Ono @ Blue note Tokyo

RECENT WORKS
最近リリースされた、<MULATOS>のコンセプトについて、お聞かせください。

このアルバムジャケットを見れば分かると思うけど、この絵の中の船に乗っている人々は皆、ある場所を目指しているんだ。<ムラートス>の意味はスペイン語でミクスチャ−。例えば、日本人の女性が、アフロキューバン男性と結婚すると<ムラートス>になる。それぞれの違う文化が混じりあうから。スペイン女性が、アフロキューバン男性と一緒になっても<ムラートス>。 これは自分のケースだけど。


このアルバムを通して、世界中の人々に聞いて欲しい。 そして世界中の皆が同じ船に乗れるようになれば、我々はひとつになれるから。 それがこのジャケットに描かれている、色々な人種の顔でもあるんだ。 ルーツを大切にして、自分達の宗教をリスペクトし、自分が浄化された魂を持つ事によって、皆に与える事の準備が整うし、相手からも受け取る事もできるんだ。 <ムラートス>は自分から皆に与える、小さなギフトなんだ。


それからこのアルバムは、ムラートスの前にリリースした作品で、"A New Life"って言うんだ。このアルバムは自分の息子である、Lonious(ロニオス)のために捧げた作品なんだ。すごくシンプルな作品だと思う。彼は僕の人生でもあるよ。ここにプリントされている エコグラフは息子が生まれた日の時のもの。そのとなりに写真は、息子の手なんだ。すべての父親が経験するものだよ。すごく神聖で深いものを感じる。 息子が生まれた後に、すぐにスタジオに駆け込んで、4時間ほど湧き出る様にメロディ が浮かんできたんんだ。このアルバムの中の一曲で、”Nacimiento/ナシミエント(Birth)”というのがあるんだけど、それは息子の鼓動と、彼が一番最初に産声を 上げたのものを録音したもので、その上にメロディを重ねたんだ。

Early development
●ご自身は、キューバ出身で、"Latin Grammy award nominated Pianist"として、
知られていますが、そもそもの音楽的なルーツについてお聞かせください。
まずパーカッションを学び始めたキッカケは?

自分がどうしてパーカッションスタディを選んだかって?
実はおもしろいエピソードがある。
一番最初に自分のホームタウンの学校で音楽の勉強をはじめた頃、 チェロにすごく興味があって弾いてみたかった。そして僕の音楽の 先生に相談したら”君の指はチェロを弾くには長過ぎる”って 言われたんだ。(笑)その学校には他にもマリンバとか楽器が あったけど、そういう状況だったから、チェロ以外の楽器を 選ばざるおえなかった。(笑) そしてその先生の薦めで、”君にはパーカッションなんかが向い ているんじゃないか?”って言われたのがキッカケで、まずは パーカッションを学ぶ事にしたんだ。後々、結局パーカッション スタディの学位も取得した。

※Havana's Escuela Nacional de Musica

●そして、どんなキッカケでパーカッションから、ピアノへ
転向したんでしょうか?

どうしてパーカッションから、ピアノへと移行したかって?
これは、これでちょっと面白いエピソードがあるんだ。
ハバナにあるアートスクール(ハバナ芸術大学)にいる頃、xylophone (木琴),ヴィブラフォンを叩いてみたくなった。 今でも覚えているのが、当時その学校の教室には、2、3台の マリンバが置いてあって、実際島全体にそれだけしか無かったようだ。 当時キューバには、伝統ある民族楽器とかもあったけど、結局自分は xylophoneより、ピアノを選んだ。大体殆どの人がピアノを選ぶけどね。 それから補足的にピアノレッスンを勉強し始めた。 ハバナにある音楽学校を卒業する頃、あるピアニストと知合って、 ピアノってすごくいいなと思って、それを機に、どんどんと深くピアノを 研究していった。 そして卒業してから、自分の初めての仕事で、音楽の先生として、 子供にパーカッションを教えはじめた。 でも暇な時間を見つけては、自分ひとりでピアノを独学で続けていた。 そうこうしているうちに、いま現在でもピアノを弾き続けている事が出来た。(笑)

● ハバナのアートスクールに行っている頃、どんなミュージシャン達に影響を
受けましたか?

当時、学校にいた頃、自分を含めて殆どのクラスメイト達が聞いていたのは、 オスカー・ピーターソン、ハービー・ハンコック、マッコイ・タイナ−、 チック・コリア、キース・ジャレットなど、皆が知っているピアニストが中心 だった。 だけど、自分が学校を卒業する頃、クラスの友人の誰かが、ジョン・コルトレーン を聞く様に薦めてくれたんだ。 はじめてコルトレーンを聞いた時に,何か深いものを感じられずには いられなかった。そもそもマッコイ・タイナーと、コルトレーンは いっしょにプレイした事もあったし・・・で、よくよく考えてみると、 友人が、コルトレーンのテープだよと言って、貸してくれたテープには、 マッコイ・タイナーと、記されていて・・・ 当時はLPしか無かったし、CDとか何もなかったから、古びたカセットテープを 皆でコピーして回していくうちに、自分の所へ来る頃には、殆どノイズだけと 行っていいほど粗雑なものになってしまうんだけどね。(笑)

そういうのを経て、ドイツにいた自分の友人から薦められて自分自身のヒーロー として見いだしたピアニストが、<セロニアス・モンク>だった。 彼の音楽を聞いてから、自分の人生が本当に変わったんだ。 自分の中で、全く新しいディメンションが見えた。

それは人生に於いて、<自由=フリーダム>そのものが、音楽を超えた所で すごく重要な事だと。

自分は、彼をGURU(教祖)のような存在に思っていた、セロニアスモンクから教えられた哲学。 ジャズとは、フリーダムそのものだと。自分の中で、彼はずっと生き続けているし、 彼のスピリットは常にここにある。彼の奏でる全てのフレーズは、我々の心に響き伝わって来る。 彼は自分にとって、音楽的に最も大きな影響を与えてくれた一人だと思う。

彼以外にも、違った影響を受けた人も沢山いるけど、例えばベテラン、 キューバン・ピアノプレイヤーや、伝統的なフルートプレイヤー、 ルンバをプレイするバンド、自分の出身地である、Camaguey にも すごく強い音楽的なルーツがある。あと自分の父親がいつも家で ラテンジャズのレコードを聞いていた。当時はまだラテンジャズについては よく理解していなかったけど、ジャズそのもののフリーダムな表現に 強い衝撃を受けたのを覚えている。 そういった自分の受けた影響を、どんな時にも表現出来ていると思う。 なぜならそれは、自分自身の血だから。


●同じキューバ出身のルビアン・ゴンザラスとの出会い。

ルビアン・ゴンザラスも、自分にとってのもうひとりのヒーローだよ。 彼は、僕の心の中での先生だった。実際彼からは、フルレッスンを受けた わけではないけどね。メキシコに住んでいる、フルート奏者だった自分の弟の友人のリハーサルに遊びに行った際、 そのオーケストラの指揮者をしていたのが、ルビアン・ゴンザラスだったんだ。
そして、彼と話す機会があった時に言われた事が、”君がピアノをプレイする時には、 何か自分の中から湧き出て来たものを、ごく有りのままにプレイするんだ ”。 彼からのこの言葉が、人生に於いて最も良い教訓になったと思う。
いつでも自分はその時言われた事を思い出して、ひとつひとつの曲に 自分の魂を入れるんだ。

それとセロニアスモンクの言葉、ジャズとはフリーダム。
人生の意味とは、自由そのものだと。

Mid stage development
●キューバを出て、93年にエクアドルへ移住して以来、スペイン、モロッコ、
サンフランシスコなど、世界各国を転々として、Pan-Africanistとして、
知られておりますが、そのキッカケとは?

自分がキューバを出てから世界各国で暮らすようになったキッカケには、2つの理由がある。 ひとつの理由は、自分はいつでも何かを探し求めていたかった事。もうひとつの理由は、エクアドルの女性と結婚したからなんだ。 そして最初の妻との離婚後の今は、スペインに住んでいる。2人目の妻は、スパニッシュ女性。
どんな小さな国でもそれぞれ独自の伝統や何かがある。そのルーツを知る事は、 すごく重要な事で、文化を深く理解する事も必要だと思う。人生の”何か”を感じる事ができると思う。自分の周りにある世界を、自分の裸目で見て、心で感じる事が大切だと思う。これが自分が何故、他の国に移住して生活を始めた事の目的だと思う。

そして音楽的側面から言えば、最初の妻とエクアドルに住んでいた時期に、 一番入り込んでいたのが、アフロ・エクアドリアン・ミュージックだった。 その時に一緒に活動していた地元のアーティストとともにいくつかの作品を 残した事もある。2、3枚目のアルバムとかにも参加して貰っている。 アフロ・エクアドリアンの伝統的なルーツを持つアーティスト達とコラボレーションをしたんだ。こういう事を色々な国々で実現出来るのは、すごく素晴らしい事だと思う。どんな国に行っても、すばらしい何かがあるんだ。外国で自分の事を受け入れてくれて、そこのアーティスト達から学んだ事を消化して、自分に対して送られて来る、 その根源にあるメッセージとか、ルーツを理解することはすごく大切な事だと思う。

●ご自身の持つアフロキューバンのルーツをベースに、後天的に身につけた
トランスカルチャーエクスペリエンスを、どのように音楽に活かしていったんでしょうか?

すべての根源は大地の母であるアフリカから来ていると思う。アフリカは母なる大地なんだ。もしあなたがモロッコへ行く機会があれば分かると思うけど、至る所にアフリカの影響があるのを目にする。実際にあそこはアフリカだけど、全く違う文化が存在する。
もしあなたが実際に尋ねて行くと分かるけど、セネガル、モザンビーク、ナイジェリアをはじめ、キューバ、ブラジルなど、全て何かしらの形で、アフリカ文化の影響を見る事ができる。アフリカ文化は色々なスタイルの文化をミックスして、内側に浸透する事が容易な証しだと思う。 そのルーツを自分の魂で感じる事ができる。それが我々の祖先達が教えてくれようとしている、最も大切な事だと。

いつも全てがテーブルの上に用意されている。
”ママ・アフリカ”は、いつでもオープンで、子供達から色々なものを受け入れてくれる存在だと。それほど多くの人々は飛行機のチケットを買ってまでも、アフリカにやって来る事は出来ないけど、いつかは母なる大地であるアフリカに戻って、その ”ルーツ”に触れる事が必要だと思う。

あなた自身が準備が整い、内面を浄化して、母なる大地に戻る。母なる大地は
いつでもあなたを受け入れる準備がある。

自分が音楽をやっている中で、”ある瞬間”に音楽が自分の中から湧き出て来るような感覚になるときに、いつも心の中で、母と会話をするんだ。 自分は、いつでもママが言っていた言葉を思い出している。大きなテーブルの上に 沢山の食べ物を用意して、ファミリーで一緒に食事をする事。皆一緒にいる事が大切な事。これがファミリーにとって重要で、皆で前進できることの要素のひとつだと。いつもママが自分に言っていた事なんだ。

●その上、ご自身の音楽は、ショパン、ドビュッシー、サティなどのクラッシック、
インド音楽にコネクトしていますが、その根底にあるものとは?

クラッシック、ショパン、ドビュッシー、サティ、それにインディアン音楽などの 音楽には、色々なものをインスパイアしている要素がある。これらの音楽の中に 自分自身は生きている。去年は一年中沢山旅行をしていて、その中で沢山の人々に出会った。 自分の人生の中で、ずっと予期していたような人々との出合いも多くあった。

だから、 自分の神様から与えられた素晴らしい出合いに対して、感謝の念を忘れずにいる。 そして自分の音楽のルーツであるキューバとのコネクションには、アフリカン・ ミュージックとのかかわり合いが常にある。

それに日本の音楽でも、琴のような素晴らしい楽器や、三味線など、いい音を 鳴らす楽器がある。インドとか旅行するとシタールのような楽器に触れたりして、 そこには良いヴァイブを感じる。

こういう伝統的な楽器は何百年、何千年と昔から連綿と受け継がれて来たもので、それぞれ人間の進化と共にルーツがある。世界中別々の場所で、沢山の楽器は同じような時期に出現してきた。 ある友人が話していた事で、もしあなたが今そこで見た何かは、遠く離れた別の国の違う人が、あなたと同じようなものを見る事があったりする。 だから、音楽にはすごく強い魂のコネクションがあるんだ。魂自体がアフリカや、 中国、日本、それにキューバの人と話した時に見るかもしれない。

例えば、自分はキューバで生まれ育ったにも関わらず、アフリカン・ミュージックと、すごく強いコネクションを感じられずにはいられなかった。自分の中にある、人生の一部分の何かのようなものだと思う。自分の中にいつでも誰かルーツのようなものを感じられずにはいられない。
あなたの質問に戻るけど、アフロキューバン音楽と、インド音楽、ブラジル音楽、クラッシック、全てに何かコネクションのようなものが根底にあるからなんだ。


●もしよろしければ、次ぎのプロジェクト予定についてお聞かせ下さい。

最近リリースした新作、"Mulatos"、そして次ぎにリリースする予定のアルバム "Mediam point"。このアルバムのコンセプトは、インド音楽、アフロキューバ音楽、アフロブラジリアン音楽、それにヒップホップなどのコネクションをミックスさせたような作品になると思う。なぜならどんな音楽もルーツは一緒だからさ。全ての音楽にはコネクションがあって、自分のボディ&ソウル、それぞれ体の部分、肌の色。それに自然なものなんだ。 音楽はすべての答えなんだ。人間の持つ感情的な事、反対に音楽は感情的な事に対するクエスションでもある。音楽自体を自由に表現する事が大切な事だと思う。

いちおうアルバムタイトル名は2つほど考えてあって、1つは<ミディアム・ポイント>、 もうひとつは、<ポイント・オブ・ブレイン>。 でも今選ぶとすれば、<ミディアム・ポイント>というタイトルが良い感じだと思う。 <ミディアム・ポイント>は、皆寄り集まって、ある場所を一緒に目指してゆくというイメージなんだ。 今からすごく楽しみなんだけど、いちおう2、3曲はレコーディングしてあって、 これから更に新しい曲も作って行かなきゃいけないんだ。(笑)

● How does music make U feel?
すごく良い気持ちにさせるよ。生きている実感を得る事ができる。

●日本のファンの方へメッセージをどうぞ。

我々は皆ひとつになる必要があると思う。平和が一番重要な位置になければ いけないと思う。愛は平和のブラザー。それらは常に一緒に連動している。 <ラブ&ピース>これを自分が皆に与えたい事でもあり、自分も受け取りたい ことだよ。<ラブ&ピース>は、全ての人にとって大切な事だと思う。 精神的な側面からも、とてもやさしい事だと思う。

ムーチャス・グラシアス!!


Supported :Iori Ono @ Blue note Tokyo、Ota records,Music Camp,Inc]
[Interview & Text by jun ide


Omar Sosa オマール・ソーサ

オマール・ソーサは、'65年、キューバはカマグエイで生まれたアフロ・キューバン・ピアニスト。幼少の頃から地元の音楽院でパーカッションを学び、世界各国の様々な音楽に親しんでいた彼は、ハバナ芸術大学入学後にピアノを始め、クラシックやジャズを学んだ。同時にハバナ国立舞踊団などで音楽監督を務め、以後、エクアドルを起点に'93年からいくつかのグループでミュージカル・ディレクター兼キーボード奏者として活動。数年後にはスペインに渡り、続いて米サンフランシスコはベイ・エリアに赴き、同地のラテン・シーンで名を馳せるようになる。そして'97年、オマールは全編ソロ・ピアノによる初のリーダー作『オマール、オマール』を発表。アフロ・ラテン〜ジャズを独自の世界観で描き出した彼は、以降4年間の間に、バンド編成での『フリー・ルーツ』、ベイ・エリアの打楽器奏者ジョン・サントスとの競演ライヴ盤『ンフンベ』、二度目のソロ・ピアノ作『インサイド』、斬新なサウンドを展開した『プリエートス〜黒い神々の囁き』、またアフリカンなテーマで作り上げた『スピリット・オブ・ザ・ルーツ』(Pヴァイン・レコード)を立て続けにリリース。

http://www.melodia.com/
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