ミニマルミュージックとは? Text by Eiji Fukuda

ミニマルミュージックとは?

20世紀後半の電子技術の発達は人々の社会生活や経済に多大な影響を与えたが、
それは同時に芸術の世界にも多大な影響を与え、新しい表現方法を生み出した。
シンセサイザーやシーケンサーの登場、テープレコーダーやサンプラーなど録音
技術の発達は当初は既存の音楽のために開発された工業製品だったが次第にそれらの
特性を利用して音楽表現をする人たちが現れた。それはミニマル−反復、繰り返し−
という表現方法である。

古典的な音楽表現においては「繰り返し」行為はあまり歓迎されてきませんでした。
何回か同じフレーズやリズムを繰り返すことで一時的なアピールをすることができますが、
普通、群衆は次第に飽きてしまいます。
しかし、しつこいほど執拗にしかもシンプルなフレーズや音を繰り返すことである種の
呪術的な効果が起こります。これを基本とするのが「ミニマルミュージック」です。
しかも全く同じ4拍1小節のリズムやビートが延々に繰り返す(それは単なる音のループ)
のではなく、コードや音色、もしくは波形やエフェクトが進行に伴って微妙に変化、展開
していく−つまり変化の少ない状況における変化の美学とも言えます。
音楽史においてもクラシックでミニマル的表現を用いていたライヒなどもミニマルミュージック
の原点、といえなくもありませんが、昨今のミニマル(ダンス)ミュージックは「電子音楽」で
あり、機械が生み出す一定のビート、リズム、シーケンス技術によるものです。本当はマニュエル
ゴッチング「E2−E4」をはじめとする実験的なジャーマンプログレッシブやもちろんクラフト
ワークが生み出した正確なマシンビートにも触れたいところですが、ここでは80年代後半の重要
な経緯を交えて説明したいと思います。

[シカゴアシッドハウス]

80年代後半、様々なエピソードがあるがシカゴに住んでいた変わった人たち(DJピエール、
アルマンド、FINGERS等)がチープな電子楽器類を寄せ集めて作り始めた、ROLANDのTR909や
TB303などの本来の使い方を反して表現した最初のエレクトロニック ミニマル ダンスミュージックである。
荒れた4/4ビートに壊れたような音色で異常なフレーズを組み合わせたような音楽。
特にUKやヨーロッパのシーンに飛び火し、また同時期に現れたデトロイトテクノと融合していき、
その後のダンスミュージックの歴史を塗り替え、多数の人々に多大な影響を与えた。

[ミニマルテクノの登場]

初期シカゴアシッドの流行後、90年代前半はシカゴハウスの商業音楽化に伴って良質なミニマル
作品は影を潜めていたが90年代中期に入りシカゴのGREEN VELVET(カジミヤ)率いるRELIEFレーベル、
カナダの+8はRICHIE HAWTIN、中西部のWoody McBrideらによるCommuniqueレーベルからの
地下ミニマルアシッド作品群、デトロイトでもジェフミルズを筆頭にOCTAVE ONEやロバート・フッド、
TERRENCE DIXONらがミニマルを展開、ドイツではトーマスヘックマンら初期FORCE INCアーティスト達が
シンセの音色にこだわったミニマルテクノを続々とリリースし、スウェーデンのカリ・レケブシュや
アダムベーヤーなどのややハードなミニマルテクノが現れ、オランダのDJAX-UPはシカゴアシッド復興や
新たなシカゴ・ミニマリストを多数輩出、日本でも田中フミヤ率いるとれまレーベルが誕生し、
NYではJ・ベルトラムやSTEVE STOLLが大活躍するなどミニマル的な音楽表現が一気に盛んに。

[昨今のディープ系ミニマル]

PCとソフトウェア技術の性能向上がもたらした新しいミニマルテクノ/ハウス音楽。
この近年新たなムーブメントとなってきているジャンルにクリック系、ラップトップ系などと
呼ばれるミニマルダンスミュージックが台頭してきています。
ビートは比較的スローで面白いSEやサンプル音を積極的に取り入れたスタイルが目立っています。
代表的なアーティストやレーベルでは、Akufen,Algorithm,田中フミヤ,background,最近のFORCE INC.,
などが挙げられます。また比較的ハウス寄りのアプローチではシカゴのChris GreyやスウェーデンのRONIN、
フランクフルトの音響ミニマルPLAYHOUSEやPERLONレーベルなどの活躍にも期待したいところです。
「繰り返す」という表現方法を機軸にアーティストそれぞれのアイデアや手法で個性的な音楽を構築しています。
たとえばAkufenはラジオなどからの大胆なサンプルをカットアップしてファンキーなミニマルに、
Rhythm_Makerのように徹底的にミニマルメロディそのものの美しさに磨き上げたり、
PORTABLEのようにアフリカ民族音楽のビートや要素を取り入れたりとその音楽的個性も様々で
そのうちミニマルに感じないミニマルミュージックなども現れてくるかもしれません。

Text by Eiji Fukuda

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[情報提供:2/15/2003 Text by Eiji Fukuda]

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